青本の理解 特許審判
審判系は条文がごちゃっとなっていて、整理しないと記憶できないと判断しました。
青本P454
138条 審判長
…審判長の具体的な権限については、133条、133条の2、134条、145条にも規定されている…
(133条 方式に違反した場合の決定による却下
133条の2 不適法な手続の却下
134条 (無効審判系での)答弁書の提出するチャンスを与える等
145条 無効審判系の口頭審理を書面審理にする権限)
青本P439
133条
…審判請求書は131条1項に規定しているように特許庁長官に提出されるものであり、特許庁長官は17条3項によりこれを処理できるものであるが、審判官を指定した後は、本項により処理される。すなわち、137条1項の規定により審判官が指定され、138条1項の規定により審判長が指定された時は、当該審判請求書は特許庁長官から審判長に回付されてくるわけである。
なるほど。流れは、
131条 審判請求書を特許長官に提出(→審判長が指定されるまえは17条3項により特許長官が処理していく→137条審判官、138条審判長指定→審判請求書は審判長回付→審判長による点検がおこなわれていく→審判長は131条(審判請求の方式)違反の場合には補正命令がを命じなければならない。
じゃあ、135条(不適法な審判請求の審決による却下)との関係はどうなっているの。
131条違反(審判請求書の方式違反や審判請求について手数料(←請求書ではないが請求書と一緒に納めるものなので、131条に振り分けられている、のかな。)が納付されていない時など)は133条により審判長により補正命令がやってくる。
(注意;133条1項は「〜補正をすべきことを命じなければならない。」
133条2項は「〜補正をすべきことを命ずることができる。」
ちなみに、133条2項は平成8年改正までは17条3項で処理していたもの。となると、17条3項は「〜命ずることができる。」に合わせたのだろう。なぜなら、133条3項も平成8年改正で「却下しなければならない」→「却下することができる」にかわり、青本にも「広い概念である「することができる」の書き振りにしたものである。これによって、従来の実務上の対応が変わるわけではない。」(青本P441)と書いてある。)
一方、135条は、
青本P452
…その他についての請求要件が欠けており補正することができない場合は、本条の規定により合議体としての審判官が審決をもって却下し、…答弁書提出の機会を与える必要もない。
例;請求期間経過後の請求又は請求適格のないものの請求等(←こんな基本的なことまで、合議体になるまでスルーということは、逆に「補正のチャンスがないもの」と判断されれば、審判長の方式点検はどんどんスルーさせて、「はい!合議体が言っているからその審判請求は却下ね。答弁書の提出チャンスもあげません。」と、ヘンテコな審判請求をバシバシ却下するための条文なのだろうか。135条は。)
ここまでくると、自分の中でイメージは下記のようになりました。
審判手続の中の方式違反
❶補正のチャンスがあるもの(133条)
①請求書(133条1項、審判長により補正命令必ずくる。)→東京高等裁判所
②それ以外(133条2項 審判長により補正命令くるかもね。)
❷補正のチャンスがないもの
①請求(請求書)(135条 合議体により却下)
②それ以外(133条の2 審判長により却下)
133条、133条の2、135条をみると、審判手続の方式違反の中でも、審判請求書だけが、特別扱いされている。
その理由の一つは「…審判官はこの請求の趣旨に記載されていない範囲については審決することはできない。例えば、特許請求の範囲が2以上の請求項に係るものについて、その1つについてのみ無効審判が請求されている場合は、審判官あ他の部分についても無効理由があると考える場合でも、審決はその請求のあった部分に止まらざるを得ない。」(青本P431)とあるのことからも、審判官にとって請求書は重要であるからと思われる。
さらに、133条(青本P441)に「ちなみに、請求書の却下の決定に不服があるときは東京高等裁判所へ出訴することができ(178条1項)、また、これ以外の手続の却下の決定に不服があるときは行政不服審査法に基づく審査請求、または、行政事件訴訟法に基づく訴訟を提起することがきでる。」と記載あることからも、やはり請求書は特別扱いとなっている。
ちなみに、133条の2(青本P442)も「行政不服審査法に基づく審査請求又は行政事件訴訟法に基づく訴訟を提起することがきでる。」とある。
裁判所について最後に気になったので、178条の青本もチェックしたい。
178条
青本P536
…特許庁における審決、決定ももとより行政処分であり。それについての訴えは行政事件訴訟法の適用を受けるのが原則であるが、特許事件の性質条、同法の規定をそのまま適用することが必ずしも適当でないので、本条から184条までの規定を設けて行政事件訴訟法の特則を定めたものである。
…行政事件訴訟法12条によると処分行政庁の所在地の裁判所、すなわち、東京地方裁判所が管轄裁判所となるべきであるが、特殊の理由から東京高等裁判所を管轄裁判所としたのである。すなわち、特許庁での審判手続が裁判に類似した準司法的手続によって厳正に行われる以上、さらに三審級(地方裁判所から最高裁判所まで)を重ねることはいたずらに事件の解決を遅延せしめるという事情と、事件の内容がきわめて専門技術的であるため、特許関係の専門家によっておこなわれた審判手続を尊重しようという事情によって、一審級を省略して直接に東京高等裁判所へ出所することとしたものである。
→ここからも請求書の却下の決定のみが東京高等裁判所ということは、請求書以外は専門的なところはないというイメージでよいかと。
前へ、前へ。